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2008年 05月 02日
今日なにげなく娘のおもちゃ箱をガサ入れしていたらシルバーメタリックに塗装された像のメカが出てきた。 そうそう、これはスリランカに行ったとき、ターッタ(お父さん)が娘にくれたんだったね。お腹の下のスイッチを入れると・・・ウギャーッス!ジ~~と言いながら目を赤く光らせ、歩き始めた。壁にぶつかりそうになると避けながら畳の部屋を徘徊する像を恐怖のまなざしで見つめる娘。2分後くらいにとうとう泣きじゃくり始めたので、やっぱりまだダメだったと、再びおもちゃ入れの奥深くにシートをかぶせて葬った。 私たちがスリランカから日本へ帰る日、ターッタが「お別れのプレゼントに」と、これをくれたときも、同じことが起き、「何故にこのセレクション?」と興味深く観察していたのだが・・・。 息子二人に恐れられている厳しいお父さん、仕事人間で敬虔な仏教徒とくれば、赤ちゃん、しかもすぐ泣く女の子(そして半分日本人)にどう接してよいか戸惑っているのもなんとなく察することが出来る。 朝5時に起きて身を清めるために水風呂に入っているというのは今回の滞在で初めて知った。暖かい国とはいえ、屋内での朝晩の水シャワーは心臓に悪そう・・・とためらう冷たさなのに、明け方に水風呂・・・。 その日は偶然早起きしてしまった私がトイレに行こうとすると、中からチャプン・チャプ~ン・・・と人の気配・・・。寝巻き(正確にはムームー)姿でモーニングティーを淹れるアンマに「トイレ、誰か使ってるの?」と聞くと、「ターッタ・ターッタ」とタコが泳いでいるジェスチャーで教えてくれる。10分ほど我慢して再び来てみると、まだまだ入っている様子。「ふえ~ん」と言いながら蚊帳の中で丸くなっていると、アンマがやってきて、「サカナ男は行っちゃったよ~(直訳)」と教えてくれたので、急いで便座へGO!湯船を見ると、まだ水がユラユラ揺れているのであった。 身を清めたターッタは10数分間、じっと頭を下げて仏像に向かう。毎朝、仏像様の横に新聞紙のコヨリにココナツオイルを浸し、火をともしたものが供えられているのはお父さんの所業なのだった。 床に落ちたコヨリの灰を蹴散らしながら慌しく職場へ向かうのは朝6時半。バス停まで歩きで行くこともあれば、アイヤのバイクの後に乗せてもらうこともあるのだが、いずれにせよ、広い庭の門のところまで見送りに行き、100m先の角でターッタが曲がるときまで見守っているのはアンマの日課。角を曲がる時、ターッタは必ずこちらを振り返って手を振るのである。アンマはそのままにしておくと野良犬が5匹くらい入ってくるので、門を閉めて、庭を箒で掃除してから家に入ってくる。 ときどきここでターッタが舞い戻ってくることもある。無言で家に走り入り、忘れ物の手帳を探し出して、またあの角で手を振りながら去る。さすがに二回は戻ってこないが、夫のおっちょこちょいは実はこのお父さん譲りらしい・・・。アンマはほとんど毎日、「ターッタが私の眼鏡を持って行っちゃったから、新聞が読めない」とボヤいていた。そんなに似てる眼鏡なら、ひと目で違うと分かるデザインのにしたら?と言う私に、ターッタの帰宅後、二つの眼鏡を見せてくれるアンマ。「全然違うじゃん。なんで間違えるの!?じゃ、置く場所を工夫してみたら?」と言う私に、そんなこととっくに試したけど効果がないとアンマはすっかり諦めている模様でターッタがさっき買ってきたパパイヤを切ってくれる。 毎日ではないが、帰宅するときいつもお米やスパイス、野菜類などのみやげを手にいっぱい持って帰ってくるターッタ。「お母さんが頼んでるの?」と聞くと、そうではなく、足りなそうなものを勝手にみつくろってくるらしい。一応私も主婦なので、ありがたいことではあるけど、それって献立を考えたりする点で、かえって面倒じゃないの?とアンマに同情するのだが、ベテラン主婦にとってはそんなこともないのかな・・・? 家に帰るとすぐシャワーを浴びて、Tシャツ・サロン姿でカレーを食べる。スパイスはみんなと同じでは物足りないので、片手の平に練り唐辛子を載せて舐めながら。食後にテレビを見ながら紅茶を飲むときも、砂糖はミルクティーに入れずに、やっぱり手の平に載せて舐めながら飲む。「味が混ざるのがイヤ」なんだって。 この飲食の仕方は、会う前からおおげさなジェスチャー付きで夫に聞いていたので、どんな野獣のようなお父さんかと思っていたが、外見は「浅黒くて痩せているジーコ」といった感じで、笑顔も上品なスリランカ紳士なのであった。 帰国後、アイヤとターッタと娘のサンスィーが3人で写っている写真を送った。アイヤのバイクの後にサンスィーを挟んでまたがり、あの角まで行って戻ってきたときの写真で、初の3ケツ・バイクにサンスィーは恐くてベソをかいている。「ターッタが毎日毎日飽きもせず、ニヤニヤしながら眺めているので、拡大したのをもう一枚送ってね」とアンマに頼まれた。 像とバイク周遊・・・。サンスィーにはハタ迷惑にも見えるプレゼントだが、きっと愛情がたっぷりつまっているのだった。
by kanamarine
| 2008-05-02 14:08
| 夫の家族
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